ひねこ・いどっこ・ながねっこ

著:椎名小夜子  昔々のそのまた昔、とある小さな漁村のお話。  徳川大将軍のご時世にありまして、のんびりとした平和な日々が続いていた頃のお話でございます。  小さな漁村は、名を「浮島」といいました。いいえ、決して離島ではありません。  田畑を流れる川と、深々とした山、そして夕日がゆっくりと沈んでいく海に囲まれている土地でございます。  それはまるで陸の孤島。  ……というのが、...

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あなたの先祖はいつから? 私は文久2年から。

著:椎名小夜子  現代日本の核家族世帯が多い状況では自分の祖先をどこまで遡れるものだろうか?  こういうご時世に於いてなんとも幸運な事に、私は父側も母側も、わりとはっきり家系図が残っている。  これから語る事は、本州最北端の地に住む母方の祖父から直接聞いた話だ。  便宜上、祖父の名前は以下「K崎 敏夫」としておこう。  この随筆には祖父を始め「K崎」という人物が登場するが、全て...

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影踏み王子

著:遥飛蓮助  のちにYは語る。 *  T県S町に住む子どもたちの間で、『影踏み王子』と呼ばれるものの噂がある。  十三夜の晩、月明かりの下で影踏み鬼をすると、影の中から現れるという黒いおばけのことだ。  頭部は人の形をしているが、のっぺりとした顔には鼻と口がない。目はあるものの、それぞれ大きさが異なるらしい。  右目は顔半分を占めるほど大きく、ごま粒大の黒目がキョロキョロ動く...

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大雪の宿

著:笛地静恵 【前書き】国民的なマンガ・アニメである『ドラえもん』の二次創作です。彼も彼女が好きだったのではないか。そんな発想がもとです。この作品には、一部に性的な表現がふくまれています。ご注意くださるように、お願い申し上げます。 1・邯鄲の間  今は昔、ありえない宿に泊まった。  白山連峰で死ぬつもりだった。  失恋をした。助手をしていた女性と、軍需産業の御曹司とのどろどろの...

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イマジナリ―ブラザー

著:砠 新樹  イマジナリ―ブラザー(架空の兄)は実在する。およそすべての人の心に踏み入ることができる──。人は言う。しかし私はついぞ彼に出会ったことがない。彼が現れたと教えてもらって、さまざまな土地や人を尋ねたが、そんな私を見て笑うかのように、架空の兄は現れない。十年ちかくそうして諸国を旅し、両親が病に倒れたと報せを受けて故郷に帰ってからは、いつしか自然と彼のことを忘れていた...

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リンカーネーション

著:淡雪 Awayuki Reincarnation   1 遠のく意識の中、あたしは、夢を見る。 あたしとあなたが、二人で笑い合いながら、草原を走り回る夢。   でも、それは叶わなかった。 だって、あたしは黒人で、あなたは白人だから。 何もかもが肌の色で区別される世界だから、本来、関わるはずがなかった。 でも。 あたしは覚えている。 まだほんの子供だった頃、仕事中に暑さで倒れ...

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三本角の怪物

著:雪村月路  地中深くの迷宮には、角の三本ある巨大な怪物が棲むと伝えられた。100年ほどの昔、この迷宮を造って怪物を封じ込めることに成功したのは、当地の領主の先祖だったという。以来、代々の領主の怒りに触れたものは、老いも若きも、この迷宮に送り込まれた。また、貧しさゆえに盗みを働いた孤児や、想う相手と駆け落ちしようとして捕らえられた娘など、哀れな罪人もすべて、怪物への生贄とされ...

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朽ちた館にて

著:雪村月路  彼の愛馬は、神馬の血を引いており、疲れを知らず、夜目も利く。  暮れた空には月が明るく、行く道を照らしてくれている。  それで、彼は休む場所を探しながら、道なりに馬を歩ませていた。  しばらく行って、古びた屋敷を見つけた。ひどく荒れ、住人はなさそうだ。  一晩休めるようなら、屋根を借りることにしよう。  彼は、馬を降りて門につなぎ、中に入った。  不思議な花の香...

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著:雪村月路 (1)  野宿は避けたいが、さて、人家は見つかるだろうか。と、心配していた若者は、暗くなった頃、一軒の明かりを見つけた。近づいてみると、平屋だが、大きな家だ。 若者は近くの木に馬をつないで、家の戸を叩いた。しばらくして、戸の向こうで、女性の細い声がした。 「どなた?」 「旅の者です。一晩、屋根を貸していただけませんか」  戸が開いた。美しい娘が、虚ろな瞳で若者を見...

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小指落としの怪

著:森凰みつちん 第一話 ①    空っぽの炊飯器を見つめていたとき、浩太郎はうちひしがれる思いに駆られた。あんまりにも何もないため、そのまま自分の器に当てはまるように思えたのだった。   器の計り知れない男であると自身に言い聞かせて生きてきたが、その器にからっきし中身がなく、底が知れていることはもう自身の心には隠しきれなかった。できれば目を背けていたかったと、自発的かつ自虐的...

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