あなたの先祖はいつから? 私は文久2年から。

著:椎名小夜子  現代日本の核家族世帯が多い状況では自分の祖先をどこまで遡れるものだろうか?  こういうご時世に於いてなんとも幸運な事に、私は父側も母側も、わりとはっきり家系図が残っている。  これから語る事は、本州最北端の地に住む母方の祖父から直接聞いた話だ。  便宜上、祖父の名前は以下「K崎 敏夫」としておこう。  この随筆には祖父を始め「K崎」という人物が登場するが、全て...

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影踏み王子

著:遥飛蓮助  のちにYは語る。 *  T県S町に住む子どもたちの間で、『影踏み王子』と呼ばれるものの噂がある。  十三夜の晩、月明かりの下で影踏み鬼をすると、影の中から現れるという黒いおばけのことだ。  頭部は人の形をしているが、のっぺりとした顔には鼻と口がない。目はあるものの、それぞれ大きさが異なるらしい。  右目は顔半分を占めるほど大きく、ごま粒大の黒目がキョロキョロ動く...

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朽ちた館にて

著:雪村月路  彼の愛馬は、神馬の血を引いており、疲れを知らず、夜目も利く。  暮れた空には月が明るく、行く道を照らしてくれている。  それで、彼は休む場所を探しながら、道なりに馬を歩ませていた。  しばらく行って、古びた屋敷を見つけた。ひどく荒れ、住人はなさそうだ。  一晩休めるようなら、屋根を借りることにしよう。  彼は、馬を降りて門につなぎ、中に入った。  不思議な花の香...

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小指落としの怪

著:森凰みつちん 第一話 ①    空っぽの炊飯器を見つめていたとき、浩太郎はうちひしがれる思いに駆られた。あんまりにも何もないため、そのまま自分の器に当てはまるように思えたのだった。   器の計り知れない男であると自身に言い聞かせて生きてきたが、その器にからっきし中身がなく、底が知れていることはもう自身の心には隠しきれなかった。できれば目を背けていたかったと、自発的かつ自虐的...

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曾祖母×伝承×探求心

著:空吹四季  イコールで結ぶのが適切かどうかは分からないが、私は年寄りっ子ゆえに民間伝承を好む。たとえば、墓地で転んでしまったらその場の土を舐める等、因果関係・理由云々の前に『こうすると良い』のだということが、周囲のお爺さんやお婆さんとってはごく自然で、私もそれに触れてきたからだろう。そんな私が母から聞いた、曾祖母の話をしようと思う。  曾祖母は、髪をお団子に結い上げおやつに...

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