ひねこ・いどっこ・ながねっこ

著:椎名小夜子  昔々のそのまた昔、とある小さな漁村のお話。  徳川大将軍のご時世にありまして、のんびりとした平和な日々が続いていた頃のお話でございます。  小さな漁村は、名を「浮島」といいました。いいえ、決して離島ではありません。  田畑を流れる川と、深々とした山、そして夕日がゆっくりと沈んでいく海に囲まれている土地でございます。  それはまるで陸の孤島。  ……というのが、...

...

影踏み王子

著:遥飛蓮助  のちにYは語る。 *  T県S町に住む子どもたちの間で、『影踏み王子』と呼ばれるものの噂がある。  十三夜の晩、月明かりの下で影踏み鬼をすると、影の中から現れるという黒いおばけのことだ。  頭部は人の形をしているが、のっぺりとした顔には鼻と口がない。目はあるものの、それぞれ大きさが異なるらしい。  右目は顔半分を占めるほど大きく、ごま粒大の黒目がキョロキョロ動く...

...

三本角の怪物

著:雪村月路  地中深くの迷宮には、角の三本ある巨大な怪物が棲むと伝えられた。100年ほどの昔、この迷宮を造って怪物を封じ込めることに成功したのは、当地の領主の先祖だったという。以来、代々の領主の怒りに触れたものは、老いも若きも、この迷宮に送り込まれた。また、貧しさゆえに盗みを働いた孤児や、想う相手と駆け落ちしようとして捕らえられた娘など、哀れな罪人もすべて、怪物への生贄とされ...

...

朽ちた館にて

著:雪村月路  彼の愛馬は、神馬の血を引いており、疲れを知らず、夜目も利く。  暮れた空には月が明るく、行く道を照らしてくれている。  それで、彼は休む場所を探しながら、道なりに馬を歩ませていた。  しばらく行って、古びた屋敷を見つけた。ひどく荒れ、住人はなさそうだ。  一晩休めるようなら、屋根を借りることにしよう。  彼は、馬を降りて門につなぎ、中に入った。  不思議な花の香...

...

著:雪村月路 (1)  野宿は避けたいが、さて、人家は見つかるだろうか。と、心配していた若者は、暗くなった頃、一軒の明かりを見つけた。近づいてみると、平屋だが、大きな家だ。 若者は近くの木に馬をつないで、家の戸を叩いた。しばらくして、戸の向こうで、女性の細い声がした。 「どなた?」 「旅の者です。一晩、屋根を貸していただけませんか」  戸が開いた。美しい娘が、虚ろな瞳で若者を見...

...

Burning Red Riding Hood

著:紫水街 ※この作品には暴力、ホラー、その他グロテスクな表現などが含まれています。  昔々あるところに、赤いずきんがとてもよく似合う女の子がいました。  そのずきんは、おばあさんに貰ったものでした。おばあさんから赤いずきんをもらった女の子は、寝るとき以外はいつもそのずきんをかぶって暮らしていました。それがとてもよく似合っていたので、いつの間にかその女の子は、みんなから赤ずきん...

...

旅人の語歌

著:桐夜白 風が舞う 遥かなる昔話を引き連れて。 旅人は歩む 遥かなる昔話を引き連れて。 都から都へと 幾多の語りを抱えて。 東は桜蘭宮都 西には洋明城都 北には冷舞州都 南には温海島都。 旅人は古今東西 歌を引き連れて 旅の共は昔語り。 楽器を持ちて 物語を歌う。 民は旅人を待ちわびる 此度はどのような昔語りを聴かせてくれるのか。 ソレは古今東西 旅人しか知らぬ 摩訶不思議な...

...

片恋円舞曲

著:桐夜白 昔々の、そのまた昔…。 民に受け継がれる唱うたに、こんな話が在る。 遥か大地の上、天空に浮かぶ大陸に一人の麗しき娘が居た。 「月に想いをはせて、会いたくて、恋焦がれる」 彼女が詠んだ詩(うた)は、会いたくても会えぬ想い人を想ってのモノだった。 遠く遥か離れた地へ、いずこへと居(お)わすかもわからぬ行方不明になった愛しい人よ。 アナタに会いたくて、想いが溢れ、恋焦がれ...

...

Scroll to top