小指落としの怪

著:森凰みつちん 第一話 ①    空っぽの炊飯器を見つめていたとき、浩太郎はうちひしがれる思いに駆られた。あんまりにも何もないため、そのまま自分の器に当てはまるように思えたのだった。   器の計り知れない男であると自身に言い聞かせて生きてきたが、その器にからっきし中身がなく、底が知れていることはもう自身の心には隠しきれなかった。できれば目を背けていたかったと、自発的かつ自虐的...

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汽車ノ噺

著:三船 鳩  蝉が鳴いている。  じぃ、じぃ、じぃいぃ……と途切れることなく響く、どこか切ない鳴き声。夕真ゆまは眉根にきゅっとシワを寄せて、その古めかしい建物を見上げていた。  じぃ、じぃ。  建物は小さい。とても人が住めるようには見えないし、前に色々なものがごちゃごちゃと置かれている。いつも一緒に来ていたおばあちゃんは、この小さな建物を『おやしろ』と呼んでいた。  『おやし...

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嘘八百万の紙

著:キョーカ なあ ちょっとばかし聞いておくれよ 今日、懐かしさが殺しに来たんだ 嘘八百の八百万の紙 それは旧き良き血脈が 糞の如くに産み落とした怪文書 何故か今頃受信したんだ 怪談よりもタチ悪くてさァ メルアド変えた側からこれだよ くっついて来た小さな画像は あんまりにも粗くてダサくてさ 残念ながらその文章力に 説得力は見当たらないない どうしてみんな信じちゃったの いや、送...

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異邦奇譚

著:カナイ  ……ねぇ、知ってる? 最近この辺りで宇宙人が出たんだってさ。  噂好きの女子の口には、有象無象がまことしやかに流れている。 <異邦奇譚>  とんてんかん、と工事の音が開け放した窓から聞こえる。  都市の再開発、そんな名目でどんどん形を変える街。無機質な箱が空へ向かって伸びていく。 「そういえば」  『彼女』が声を掛けてきたのは、そんなことを考えながら教室の窓の向こ...

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