影踏み王子

著:遥飛蓮助  のちにYは語る。 *  T県S町に住む子どもたちの間で、『影踏み王子』と呼ばれるものの噂がある。  十三夜の晩、月明かりの下で影踏み鬼をすると、影の中から現れるという黒いおばけのことだ。  頭部は人の形をしているが、のっぺりとした顔には鼻と口がない。目はあるものの、それぞれ大きさが異なるらしい。  右目は顔半分を占めるほど大きく、ごま粒大の黒目がキョロキョロ動く...

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三本角の怪物

著:雪村月路  地中深くの迷宮には、角の三本ある巨大な怪物が棲むと伝えられた。100年ほどの昔、この迷宮を造って怪物を封じ込めることに成功したのは、当地の領主の先祖だったという。以来、代々の領主の怒りに触れたものは、老いも若きも、この迷宮に送り込まれた。また、貧しさゆえに盗みを働いた孤児や、想う相手と駆け落ちしようとして捕らえられた娘など、哀れな罪人もすべて、怪物への生贄とされ...

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朽ちた館にて

著:雪村月路  彼の愛馬は、神馬の血を引いており、疲れを知らず、夜目も利く。  暮れた空には月が明るく、行く道を照らしてくれている。  それで、彼は休む場所を探しながら、道なりに馬を歩ませていた。  しばらく行って、古びた屋敷を見つけた。ひどく荒れ、住人はなさそうだ。  一晩休めるようなら、屋根を借りることにしよう。  彼は、馬を降りて門につなぎ、中に入った。  不思議な花の香...

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著:雪村月路 (1)  野宿は避けたいが、さて、人家は見つかるだろうか。と、心配していた若者は、暗くなった頃、一軒の明かりを見つけた。近づいてみると、平屋だが、大きな家だ。 若者は近くの木に馬をつないで、家の戸を叩いた。しばらくして、戸の向こうで、女性の細い声がした。 「どなた?」 「旅の者です。一晩、屋根を貸していただけませんか」  戸が開いた。美しい娘が、虚ろな瞳で若者を見...

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小指落としの怪

著:森凰みつちん 第一話 ①    空っぽの炊飯器を見つめていたとき、浩太郎はうちひしがれる思いに駆られた。あんまりにも何もないため、そのまま自分の器に当てはまるように思えたのだった。   器の計り知れない男であると自身に言い聞かせて生きてきたが、その器にからっきし中身がなく、底が知れていることはもう自身の心には隠しきれなかった。できれば目を背けていたかったと、自発的かつ自虐的...

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